「プロモ未来ラボ」研究員ブログ
「プロモ未来ラボ」では、所属研究員たちが「気になる」・「知りたい」・
「注目している」ことを自ら取材・体験し、レポートしていきます。
化粧品を『テストする』という挑戦
2019年7月22日
紙媒体は不調と言われるなかで、好調の雑誌があります。晋遊舎から発行されている月刊女性誌『LDK(エルディーケー) the Beauty』がそれ。『テストする女性誌』をコンセプトに洗剤から収納まで様々な日用品をテストし尽くしてきた『LDK』の美容専門誌として、2017年8月に隔月刊として創刊しました。1号前の創刊準備号の表紙には「ブランドも値段も関係なし! 世界でただ1つ、コスメを本音で評価する雑誌です」とあり登場以来、その“本音”で人気を集めています。
編集担当の久佐然子さんは、編集方針を「メーカーとのしがらみが無いため本音の評価だけ掲載する」「単にコスメ好きの素人の口コミではなく、その分野のプロに良し悪しを評価してもらう」と話します。その評価をサポートするツールとして、肌診断の専門機器も自社で有しています。
「例えば、効果がわかりにくく良し悪しの判断が難しいスキンケア製品の効果を視覚的に判断するために『VISIA(ビジア)』という肌状態を計測できる専門機器を用意しています。これは肌のキメや毛穴、シミなどがわかる機械で、美白美容液や毛穴カバー下地を使った際に、シミや毛穴がどのくらい減少したかが数値でわかるようになっています。一般の方が商品を評価する場合、その人の好みやそのときの印象によって感想が左右され公平な評価が難しい場合があります。そのため本誌では複数の方がひとつの商品で同じ検証を行い、その結果に対してプロがコメントすることで、評価の精度を高めているのです」
コメントを寄せるプロは、その多くがヘアメイクアップアーティストたち。職業柄、定番から新作まで、さまざまな化粧品に触れる機会が多い彼らの意見は、経験に裏打ちされたものだけに、信頼性も高く、編集者としても自信を持って掲載できると話します。
そして『LDK the Beauty』の真骨頂が辛口コメント。他誌では読めない厳しい評価を掲載できる理由は「掲載される商品はすべて編集部で購入しているから」と久佐さん。
「多少、強引に思われるかもしれませんが、編集部といえど、商品を購入している私たちもイチ消費者です。そのスタンスがあるからこそ、メーカーに忖度せずに、本音の意見が言えるのです」
この正直なスタンスが、編集部に意外な効果をもたらしました。それが、収益の柱の一つとなっている「認証ビジネス」です。以前から編集部が心から良いと判断した商品にはその証として「BEST BUY マーク」を誌面上で付与していました。これを店頭POPや自社WEBのLPなどマーケティングの材料として使いたいと相談してくるメーカーが増えたため、販売することにしたのです。もともと晋遊舎の月刊誌の中でダントツに高い原価率で編集をおこなっていた編集部でしたので、非常に貴重な収入源となりました。ただいうまでもないですが、お金をもらって良い記事を書くということは絶対にありません。
「莫大な広告費がかけられない中小メーカーにとっても、忖度なしでテストした『LDK the Beauty』のお墨付きは、非常に心強いようで、今後もこの傾向は続く見込みです」
女性の化粧品に対するパワーについて久佐さんは
「国を問わず、女性はみんなキレイになりたいという気持ちがあります。ですから弊誌のような本音の意見を求めています。ただしその一方で、商品を選ぶ際に成分や効果だけに注目しているとは限らないのが女性の消費の面白さ。ですから、たとえ高額でも『パッケージが可愛いから』『ブランドが好きだから』という理由で購入する方も多いのです。こうした視点は、男性のクルマや時計選びに近い感覚かもしれませんね。男性がいくつになってもクルマや時計に興味が尽きないように、女性にとっても化粧品は楽しみの一つ。年を重ねても女性の化粧品に対するパワーは力強く、尽きることはないでしょう」
現在も紙媒体で出版し続ける理由は、紙が持つ信頼性ゆえ。ですが情報のスピードが要求されるいま、ネットには勝てません。そのジレンマを払拭するため、並行してサイト運営もスタートしています。より多くの読者から必要とされるには、現在持っている信頼性に加えて、情報の速さ、この両輪が必要だという事を実感させられました。
『LDK the Beauty』では、「これまでどおり検証を重ねた商品紹介をベースに、読者に楽しんでもらえるコンテンツを増やしていきたい」と久佐さん。今後の展開がとても楽しみです。
「プロモ未来ラボ」 研究員:カオリ